■トヨタの責任においてダイハツを正す、のであれば…
2023年12月、ダイハツの型式指定に関する不正が国内向けモデルだけでも142件もあったことが、第三者委員会により発表されました。
さらに、国土交通省の立入検査により新たに14件の不正が判明、国内向けモデルでは合わせて46車種156件の不正が行われていたことになります。
これに対して、国土交通省は、ダイハツ工業に対して是正命令を発出すると同時に、特に悪質な不正が行われていた車種(グランマックス/タウンエース/ボンゴの各トラックモデル)の型式指定を取り消しています。
こうした事態において、ダイハツの親会社であるトヨタの佐藤恒治代表取締役社長は、緊急記者会見を実施。トヨタの責任によって、ダイハツの事業スキームや経営体制を見直すという意思を表明しました。
ここまでは、前回の当コラムにてお伝えした内容となります。
佐藤氏自身も、トヨタの執行役員であった2021年からダイハツの非常勤取締役を務めていたこともある(2023年4月に退任)ので、まったくの他人事ではないともいえるのですが、そうした経験も踏まえてダイハツの経営改革を実行するということでしょう。
マスコミ的には社長交代などのトップ人事が企業責任を象徴するのかもしれませんが、一般のユーザー目線でいえば誰が社長になろうが、ブランドイメージが大きく変わるということは考えづらいのも事実です。さすがに、豊田章男さんが「ダイハツの社長となって改革を進める!」と宣言すれば一般ユーザーのイメージも大きく変わるかもしれませんが……。
●トヨタの責任でダイハツ車の認証を行うのはどうだ?
現時点で判明している情報を整理すると、ダイハツの不正が行われていたのは「型式指定」の申請業務を担う認証部門となっています。
すでに2023年4月の段階で最初の不正が発覚したことを受けて、ダイハツは認証部門を開発本部から品質統括本部に移し、開発部門と切り離すことで、独立性を確保する組織改革を進めています。
さらに新型車の開発においても、それまでは一体であった開発と評価のセクションを分離することで役割を明確にしています。しかし、こうした組織改革は社外には伝わりづらく、まして一般ユーザーには「我々には関係ない」と思われがちなのも事実でしょう。
庶民感覚でいえば、ダイハツの車を安心して乗るためには、トヨタ自身が「我々の責任で型式指定を申請します」と宣言するほうがわかりやすいかもしれません。
ダイハツは開発と生産を行う組織となって、認証業務については親会社のトヨタが担うということになれば、トヨタの責任においてダイハツ車は安心して乗れる状況となるはずです。
もちろん、トヨタの認証部門に人的リソースの余裕があるとも思えませんからすぐさま進められる話ではないでしょうが、そこまでコミットするくらいでなければ、不信感を持ってしまったユーザーの理解は得られないとも感じます。
●「PIXIS」ブランドを前面に出した展開もあり?
『ダイハツ』というブランドイメージが地に落ち、信頼を失っているのであれば、トヨタの名前でダイハツの作る軽自動車を販売するというほうが、庶民感覚ではわかりやすい変化になるかもしれません。
現在、トヨタは軽自動車向けのサブブランドとして『PIXIS(ピクシス)』を展開していますが、扱っているのはピクシスエポック(ダイハツ名:ミライース)とピクシスバン(同:ハイゼットカーゴ)、ピクシストラック(同ハイゼットトラック)の3車種しかありません。あとはコペンをGR SPORTブランドで扱っているくらいです。
つまり、タントやムーヴといった売れ筋カテゴリーについて、トヨタ系ブランドでは扱っていないのです。
このあたりの判断は、トヨタがダイハツをリスペクトしているからこそだったのかもしれませんが、こういう状況になった以上「ピクシス」ブランドを前面に押し出して、トヨタ系ディーラーで軽自動車フルラインナップを扱うのもアリではないでしょうか。
もしくは、現在のダイハツ系ディーラーの看板を「ピクシス」にしてしまうというCIも、変化をわかりやすく表現できる手法といえるかもしれません。
いずれにしても、トヨタの責任において認証業務を実施するようになれば、むしろピクシスというブランドで拡大するほうが信頼回復につながるでしょう。
以上、書いてきたことは筆者の妄想ではありますが、ダイハツの改革には、これくらい大ナタを振るう気持ちで取り組むことを期待したいと思います。
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