■トヨタとBYDの合弁会社に中国現地法人もかかわる一台
トヨタが、中国で生産・販売予定の新しい電気自動車(BEV)を発表しました。その名は「bZ3」、全長4.7mを超える立派な体躯の4ドアセダンです。
このBEVの開発には3社が連携しています。ひとつは日本のトヨタ自動車、そして現地法人といえる一汽トヨタと、バッテリー大手で車両開発や販売も広く手掛けるBYDです。
より正確に表現すれば、BYDとトヨタの合弁企業であるBYD TOYOTA EV TECHNOLOGYカンパニーと、一汽トヨタが共同開発したモデルがbZ3というわけです。
ちなみに、トヨタ自動車の設立は1937年と非常に古いですが、対してBYDの設立は1995年、一汽トヨタの設立は2003年です。
各社が積み重ねてきた歴史は異なりますが、BEVという新しいカテゴリーにおいては、それぞれが強みを持っているというわけです。
日本で販売しているSUVスタイルの「bZ4X」がスバルとの共同開発であったりと、パートナーシップを上手に活用しているという印象もあります。
トヨタのBEV戦略としては、世界でもトップクラスにBEVが普及している中国市場へ向けてチャレンジするには、やはり現地での経験が豊富な企業と協力するのが有効ということでしょう。
公開されているインテリアの画像をみると、シンプルかつ未来的。それでいて温かみも考慮したデザインとなっているように感じます。
このあたりは、「ファミリーラウンジ」というコンセプトで、家族や友人と過ごす空間づくりをテーマにキャビンを作り込んできた結果といえそうです。
●2021年12月に発表されたbZ SDNそのままの姿
ところで、bZ3のスタイルに見覚えはないでしょうか。
そうです、2021年12月にトヨタが、レクサス・ブランドを含めて一挙に16台ものBEVを発表したときに並んでいた「bZ SDN」は、bZ3の先行公開だったのです。
この時点でトヨタはBYDとの提携についてアナウンスしていましたし、並べられたコンセプトカーの中にBYDが関係しているものが存在しているという噂も流れていたので驚きはありませんが、あらためて答え合わせが出来たなあと感じている人は少なくないかもしれません。
今回、発表されたモデルに「3」という数字が使われているということは、少なくとも「1」と「2」を名乗る、もっと小さなBEVが登場するということでしょうが、それらは果たしてトヨタの独自開発なのか、BYDなど既存のパートナーと組んで作るのか、それとも新パートナーシップから生まれるのか。非常に気になります。
●LFP電池を採用、一充電航続距離は600kmを超える
それはともかく、bZ3はボディサイズからCDセグメントのセダンといえますが、BEVとして十分な性能を有しているようです。
駆動方式、モーター出力、バッテリー総電力量といったスペックは未発表ですが、バッテリーの種類はBYDが得意とするLFP電池(リン酸リチウムイオンバッテリー)となり、中国のモード計測値では一充電航続距離は600kmを超えるといいます。
こうした航続距離が実現できたのには、Cd値(空気抵抗係数)を0.218と量産車としてはかなり高いレベルとしているのに加えて、バッテリー搭載量を稼いだという部分もあるのでしょう。
ただし、ホイールベースは2880mmと常識的な範囲ですから、運動性能を無視したロングホイールベースとして力技で航続距離を稼いだというわけではなさそうです。
●「コーダトロンカ」フォルムのシルエットも気になる
bZ3の発表に合わせて、開発中というbZシリーズのニューカマーがシルエットを公開したことも注目です。
なだらかなルーフラインを、テール部分でスパッと切ったスタイルは「コーダトロンカ」などと呼ばれ、疑似的にロングテール的な空力特性を実現できるという空力ボディの定番です。
日本のユーザー的には、2代目~4代目のプリウスを思い出す人も多いかもしれません。とはいえ、トヨタがbZシリーズの開発車両と明言しているのですから、次期プリウスのチラ見せということはないのでしょう。
bZ3が優れた空力性能によって航続距離を伸ばしたであろうと予想されるように、BEVにとって空力はプライオリティの高い要素となります。歴代プリウスの進化というのは、空力ボディと快適なキャビンのすり合わせの歴史ともいえます。
チラ見せされた新型BEVのパッケージングに、そうしたトヨタが持つノウハウが詰まっていると期待が高まるのは筆者だけでしょうか。
もっとも、2021年12月のBEV一気見せ発表に並んだコンセプトが、後にクラウンスポーツとして量産化されることが明らかになったこともありますから、絶対にbZシリーズのBEVだと信じるのは純粋すぎるかもしれませんが…。
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