New Audi R8
「モータースポーツは私たちのDNAの一部。今度のR8では、先のパリモーターショーでデビューしたレースマシンR8 LMS GT3と約50%のコンポーネントを共用しています。これほどレースの世界に近いロードカーは滅多にないでしょう」
アウディスポーツGmbHのテクニカル マネジング ディレクター、オリヴァー・ホフマンは思わせぶりにそう語る。
アウディは10月24日、「アウディR8」のリニューアルを発表した。現行R8は2016年に登場した2世代目で、今回初めて広範囲にわたる改良を受けたことになる。欧州市場では2019年初頭に販売が始まる。それに先立ち、現在わかっている改良部分の詳細を紹介していこう。
ボディ形式は従来通りクーペとスパイダーの2種。標準モデルの名称は「R8 V10 5.2 FSI クワトロ」で変わりないが、「R8 V10 プラス 5.2 FSIクワトロ」と呼ばれている現行上級モデルは、新型では「R8 V10 パフォーマンス 5.2 FSIクワトロ」とネーミングが改まるという。
アウディファンのみならず、広くスポーツカー愛好家にとって嬉しい知らせは、今度のR8も自然吸気V10を継承すること。しかも新型ではこのV10をパワーアップして搭載する。標準モデルの「R8 V10クワトロ」では、最高パワーが現行の540psから30ps上乗せされて570psに、最大トルクは10Nm引き上げられて550Nmを生み出す。結果として動力性能に一段と磨きがかかった。0→100km/h加速はクーペが3.4秒、スパイダーが3.5秒。最高速はクーペが201mph (約324km/h)、スパイダーは200mph (約322km/h)と、ついに200mphの大台に乗った。
上級モデルの「R8 V10 パフォーマンス クワトロ」では、現行の610psから10psアップして620psへ、最大トルクは560Nmから580Nmへ向上した。増強の秘訣は、チタン製コンポーネントを採り入れたバルブ駆動系にあるとアウディは明かす。クーペは静止状態から3.1秒で、スパイダーは3.2秒で100km/hまで加速し、最高速はそれぞれ205mph (約330km/h)と204mph (約328km/h)を標榜する。
スタビリティの向上と、タイヤを正確に路面とコンタクトさせることを念頭に、サスペンションにも改良の手が加えられている。
ステアリングのパワーアシストは、標準の電子制御機械式とオプションの「ダイナミックステアリング」ともにチューンを見直し、スピードレンジを問わず、レスポンスと路面からのフィードバックの透明度が増したと謳う。
チューンの見直しは「アウディドライブセレクト」にも及び、コンフォート、オート、ダイナミック、インディビジュアル各モードの性格付けが一層明らかになった。「R8 V10パフォーマンス クワトロ」ではこれに「パフォーマンスモード」が加わり、路面ミューに応じてドライ、ウェット、スノーの3モードを使い分ける。また、ESCの改良により、上級モデルでは、100km/hからの制動距離が最大1.5m、200km/hからでは最大5m短縮された。
19インチホイールと鋳鉄ディスクの組み合わせが標準装備だが、もちろんセラミックディスクも選ぶことができる。オプションリストに載るフロントスタビライザーは、先進テクノロジーに惹かれるアウディファンには見逃せないアイテム。素材にCFRPとアルミを使い使い分けて、単体重量を約2kg軽くしているのだ。
ビジュアル面でもR8のキャラクターが明確に表現されている。シングルフレームグリルをワイドでフラットなラインで構成したのはその一例。フードのフラットなスリットは、1980年のジュネーブショーでデビューした「Ur(ウア=最初の)」クワトロへのオマージュだ。フロントスプリッターは幅広になり、エアベントグリルが全幅に広がる。デュフューザーのスイープカーブも最適化されている。
エンジンコンパートメント内のエアフィルターを内蔵する3分割カバーは、プラスチックかCFRP製が選択できるといった具合に、アウディのデザイナーは見えない部分にもオーナーの好みが反映できるよう配慮した。
フロントリップスポイラー、サイドトリム、デュフューザーからなる「エクステリアパッケージ」は3種類ある。標準モデルではこれらのパーツがハイグロスブラックの、上級モデルではマットチタンの仕上げになる。これに加えて、ハイグロスカーボンパッケージが両モデルで注文できる。なお、ボディカラーには、メタリックの「ケモラ グレイ」と「アスカリ ブルー」が加わった。
アウディエクスクルーシブにより、インテリアを好みに応じてカスタマイズできるのは従来通り。
新型アウディR8は、アウディAGが本拠を置くドイツ・ネッカーズルムから程近いハイルブロンにあるアウディスポーツGmbHの「アウディ ベーリンガー へーフェン」ファクトリーにて製造される。日本での発売時期や価格は、発表され次第お知らせしよう。
TEXT/相原俊樹(Toshiki AIHARA)
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